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㈠ 非居住者及び法人の納税義務・源 泉徴収

1   国内源泉所得

⑴ 国内源泉所得

① 改正前の制度の概要

 非居住者又は外国法人は、国内源泉所得を 有するときに、所得税の納税義務があるもの とされています(所法 5 ②一④)。平成26年 度税制改正において、帰属主義への見直しが 行われ、国内源泉所得は次に掲げる17種類に 区分して定められています(所法161①)。

イ 恒久的施設帰属所得

イ 恒久的施設帰属所得の概要

 恒久的施設帰属所得は、非居住者が恒久 的施設を通じて事業を行う場合において、

その恒久的施設がその非居住者から独立 して事業を行う事業者であるとしたなら ば、その恒久的施設が果たす機能、その 恒久的施設において使用する資産、その 恒久的施設とその非居住者の事業場等と の間の内部取引その他の状況を勘案して、

その恒久的施設に帰せられるべき所得と されています(所法161①一)。

 また、恒久的施設帰属所得には、恒久 的施設の譲渡により生ずる所得を含むこ ととされています(所法161①一)。

ロ 恒久的施設帰属所得に係る内部取引  恒久的施設帰属所得は恒久的施設をそ の非居住者から分離独立した事業者と擬 制した場合に恒久的施設に帰せられるべ き所得とされていることから、恒久的施 設帰属所得の認識においては、恒久的施 設と事業場等(外国法人の本店等に相 当)との内部取引について、独立企業間 で行われる類似の取引と同様に扱う必要 があります。この内部取引とは、非居住 者の恒久的施設と事業場等との間で行わ れた資産の移転、役務の提供その他の事 実で、独立の事業者の間で同様の事実が あったとしたならば、これらの事業者の 間で、資産の販売、資産の購入、役務の 提供その他の取引が行われたと認められ るものをいいます(所法161②)。

 また、恒久的施設と事業場等との間の

債務の保証や再保険の引受け等は、内部 取引として認識しないこととされていま す(所法161②)。

ハ 国際運輸業所得

 恒久的施設を有する非居住者が国内及 び国外にわたって船舶又は航空機による 運送の事業を行う場合には、その事業か ら生ずる所得のうち国内において行う業 務につき生ずべき所得として一定のもの をもって、恒久的施設帰属所得とするこ ととされています(所法161③)。

ロ 国内にある資産の運用又は保有により生 ずる所得(次のチからタまでに該当するも のを除きます。)(所法161①二)

ハ 国内にある資産の譲渡により生ずる所得 として一定のもの(所法161①三)

ニ 民法組合契約等に基づいて恒久的施設を 通じて行う事業から生ずる利益配分(所法 161①四)

 民法組合契約等に基づいて恒久的施設を 通じて行う事業から生ずる利益でその民法 組合契約等に基づいて受ける一定の配分 ホ 国内にある土地等又は建物等の譲渡によ

る対価(所法161①五)

 国内にある土地若しくは土地の上に存す る権利又は建物及びその附属設備若しくは 構築物の譲渡による対価(一定のものを除 きます。)

へ 国内において行う人的役務の提供事業に よる人的役務の提供の対価 (所法161①六)

 国内において人的役務の提供を主たる内 容とする一定の事業を行う者が受けるその 人的役務の提供に係る対価

ト 国内にある不動産等の貸付け等による対 価 (所法161①七)

 国内にある不動産、国内にある不動産の 上に存する権利若しくは採石法の規定によ る採石権の貸付け(地上権又は採石権の設 定その他他人に不動産、不動産の上に存す る権利又は採石権を使用させる一切の行為

を含みます。)、鉱業法の規定による租鉱権 の設定又は居住者若しくは内国法人に対す る船舶若しくは航空機の貸付けによる対価 チ 所得税法第23条第 1 項(利子所得)に規 定する利子等のうち次に掲げるもの(所法 161①八)

イ 日本国の国債若しくは地方債又は内国 法人の発行する債券の利子

ロ 外国法人の発行する債券の利子のうち その外国法人が恒久的施設を通じて行う 事業に帰せられるものその他の一定のも の

ハ 国内にある営業所、事務所その他これ らに準ずるもの(以下「営業所」といい ます。)に預け入れられた預貯金の利子 ニ 国内にある営業所に信託された合同運

用信託、公社債投資信託又は公募公社債 等運用投資信託の収益の分配

リ 所得税法第24条第 1 項(配当所得)に規 定する配当等のうち次に掲げるもの(所法 161①九)

イ 内国法人から受ける剰余金の配当、利 益の配当、剰余金の分配又は基金利息 ロ 国内にある営業所に信託された投資信

託(公社債投資信託及び公募公社債等運 用投資信託を除きます。)又は特定受益 証券発行信託の収益の分配

ヌ 国内において業務を行う者に対する貸付 金(これに準ずるものを含みます。)でそ の業務に係るものの利子(一定の利子を除 き、一定の債券の買戻又は売戻条件付売買 取引から生ずる差益として一定のものを含 みます。)(所法161①十)

ル 国内において業務を行う者から受ける次 に掲げる使用料又は対価でその業務に係る もの(所法161①十一)

イ 工業所有権その他の技術に関する権利、

特別の技術による生産方式若しくはこれ らに準ずるものの使用料又はその譲渡に よる対価

ロ 著作権(出版権及び著作隣接権その他 これに準ずるものを含みます。)の使用 料又はその譲渡による対価

ハ 機械、装置その他一定の用具の使用料 ヲ 次に掲げる給与、報酬又は年金(所法

161①十二)

イ 俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこ れらの性質を有する給与その他人的役務 の提供に対する報酬のうち、国内におい て行う勤務その他の人的役務の提供(内 国法人の役員として国外において行う勤 務その他の一定の人的役務の提供を含み ます。)に基因するもの

ロ 公的年金等(一定のものを除きます。)

ハ 退職手当等のうちその支払を受ける者 が居住者であった期間に行った勤務その 他の人的役務の提供(内国法人の役員と して非居住者であった期間に行った勤務 その他の一定の人的役務の提供を含みま す。)に基因するもの

ワ 国内において行う事業の広告宣伝のため の賞金として一定のもの(所法161①十三)

カ 国内にある営業所又は国内において契約 の締結の代理をする者を通じて締結した生 命保険会社又は損害保険会社の締結する保 険契約その他の年金に係る一定の契約に基 づいて受ける年金で上記ヲロに該当するも の以外のもの(年金の支払の開始の日以後 にその年金に係る契約に基づき分配を受け る剰余金又は割戻しを受ける割戻金及びそ の契約に基づき年金に代えて支給される一 時金を含みます。)(所法161①十四)

ヨ 次に掲げる給付補塡金、利息、利益又は 差益(所法161①十五)

イ 所得税法第174条第 3 号に掲げる給付 補塡金のうち国内にある営業所が受け入 れた定期積金に係るもの

ロ 所得税法第174条第 4 号に掲げる給付 補塡金のうち国内にある営業所が受け入 れた同号に規定する掛金に係るもの

ハ 所得税法第174条第 5 号に掲げる利息 のうち国内にある営業所を通じて締結さ れた同号に規定する契約に係るもの ニ 所得税法第174条第 6 号に掲げる利益

のうち国内にある営業所を通じて締結さ れた同号に規定する契約に係るもの ホ 所得税法第174条第 7 号に掲げる差益

のうち国内にある営業所が受け入れた預 貯金に係るもの

ヘ 所得税法第174条第 8 号に掲げる差益 のうち国内にある営業所又は国内におい て契約の締結の代理をする者を通じて締 結された同号に規定する契約に係るもの タ 国内において事業を行う者に対する出資 につき、匿名組合契約(これに準ずる契約 として一定のものを含みます。)に基づい て受ける利益の分配(所法161①十六)

レ 上記イからタまでに掲げるもののほかそ の源泉が国内にある所得として一定のもの

(所法161①十七)

② 改正の内容

イ 恒久的施設帰属所得 イ 非居住者の事業場等

 恒久的施設帰属所得の認識においては、

恒久的施設と事業場等との内部取引につ いて、独立企業間で行われる類似の取引 と同様に扱う必要があります。この内部 取引とは、非居住者の恒久的施設と事業 場等との間で行われた資産の移転、役務 の提供その他の事実で、独立の事業者の 間で同様の事実があったとしたならば、

これらの事業者の間で、資産の販売、資 産の購入、役務の提供その他の取引が行 われたと認められるものをいいます(所 法161②、所令290)。

 ここでの事業場等とは、その非居住者 の事業に係る事業場その他これに準ずる ものであってその恒久的施設以外のもの とされていますが(所法161①一)、今回 の改正において、具体的に、非居住者の